昼夜を問わず薄暗い闇のなか、ひとりの女性が裏路地を歩く。路上に横たわった人など視界に入らないかのような冷たい目を持つ女性。彼女は、たったひとつの扉の前に立ち止まり、そしてドアを開けた。
昔、この世界の魔王が倒されたとき、残された魔物たちと人類は共存という道を選んだ。だが、魔物の立場はまだ定まっていない混沌とした状態。人の欲望は決して尽きることはなく、人は混沌に飛び込み、議会という場で、議員は"私(わたくし)"の立場で、私の最大幸福を目ざした。ある者は魔物の票や賄賂を期待し、またある者は自らの過去への復讐のために。
そうして私の集合となった国家は、大きな歪を生み出した。ある首相は、自らの利益のために法の拡大解釈を行ない、抜け道を作り、そして監査機構は崩され、三権分立はもはや形だけとなった。その結果、その首相は暗殺されようとも、自らの作った法が足かせとなり、十分な調査は行なわれず、結局犯人は見つからなかった。
そんななか、敵対勢力の暗殺という方法で自らの目的を果たそうとする者が現れた。そして彼女は今日もまた、暗殺者の元を訪れる。
ドアを開く音は、朽ちた部屋にむなしく響き渡り、この空間には足音だけが残った。ほかに何者もいないかのようだ。「仕事を頼みたいわ」
彼女の行為もまた、自らの足かせになるとは知れず。
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